医療が不確実な3つの理由

医療の不確実性

テレビや新聞では、毎日のように医療に関するニュースや記事を目にすることと思います。
医療業界っって本当に大丈夫なのか?!と思うような記事も後を絶ちません。

ただ、それらは医療の性質を正しく伝えているかというと、そうでない場合もあります。
もちろん、ニュースになっている事故の中には医療者側に大きな過失がある場合もあります。

医療っていつも完璧なイメージがありませんか?

検診受けているし、手遅れになることはないだろう。。。

手術をすれば、病気になる前の生活に戻れるよね。。。

薬を飲めば治るはず。。。

って思いたくなりますよね。
でも、安全だと思っていた電車で大きな事故が起きたり、安泰がと思っていた大企業が破産したり、、、
完璧で安心だと思っていることほどに、崩れるときにダメージは大きくなります。

こんなことを書いていると、「それは医療者のいいわけだろ」というご意見もあると思いますが、

この記事では

医療が常に確実ではないことを理解して、自ら医療と上手く関われるようになる

ことを目的とします。その目的のために3つの観点から見てみます。

  1. 診断の不確実性
  2. ⼿術の不確実性
  3. 治療の不確実性

診断が不確実?!

例えば、肺癌検診で行われるレントゲン検査があります。
この検査でがんを発見できるのでしょうか?
分かりやすさを重視するため、厳密には正確性に欠けた表現になりますが、

“肺癌”にかかっている患者を“異常あり”と診断できる確率はわずか60−80%だけ

なんです。厳密な意味では正確性にかけますが、以下のようになります。

がんをもっていても、”異常なし”と判定がでてしまう人は必ずいます。
もちろん、検査の種類によっても”どれくらい上手く見つけられるか”というのは変わってきますが、基本的に100%病気を判別して見つけ出すような検査はないのだと理解してください。

検査はそもそも100%病気を見つけられるようにできていない 


 

手術の効果が不確実?!

手術の不確実性を説明するには2つの観点にわける必要があります。

  • 人間は老化する
  • 手術で受けたダメージは消えない

の2点です。
1つ目の人間は老化することに関しては、誰も反対はないと思います。

手術によって起こる合併症(不具合、望ましくないこと)には、手術そのものによる影響(血が出るなど)と、体にストレスがかかることによるもの(心筋こうそく、脳卒中など)があります。

高齢になってくるにつれて、体も弱く、もろくなってくると同じ手術を受けても、血の出やすさや想定外の事態の起こりやすさも異なります。

腕のいい先生に手術してもらうことはもちろんですが、手術以外の面もしっかりを見てくれてる先生を選ぶことも、大切です。

2つ目の手術で受けたダメージは消えないに関してです。おそらく、多くの人が自分の体の突然の衰えを感じたことなどないと思います。

体調を崩しても、また元通り元気になれると思っていますし、それが普通です。でも本当にそうでしょうか?

手術はそれをはっきりと感じられる機会の一つです。虫垂炎の手術でも骨折の手術でも、キズがつくということはその部分は完全な元どおりにはならないということです。

さらに、胃がんや大腸がんなどで臓器を取り除いた場合に、病気になる前の生活をまったく同じ生活になるでしょうか。取り除く臓器にもよりますが、基本敵には元どおりの生活は待っていないのだと思ってください。

手術をするということは身体にダメージは負いながらも、上手く長生きしていこうをいう挑戦なのです。

人間の体は無限ではなく、衰えるもの。


 

治療の効果が不確実?!

私は、がんの患者さんを見せていただく機会も多いことから、がんについての話をさせてください。

がん治療の世界では「標準治療」や「先進医療」といった言葉が飛び交います。がん治療に馴染みのない方でも、このネーミングを聞くと、

「標準治療ってふつーなんだろうな、ありふれていそう」

「先進医療の方がよく効きそうだな」

と思うのではないでしょうか。多くの方がそうだと思いますし、私の出会った患者さんもそういう方が多い印象でした。

標準治療というのは、その段階で効果がもっとも証明されている治療で、もっとも有効な可能性が高い治療だと考えてください。

一方で、先進医療はまだ研究段階だったり、効果の証明が不十分なために保険適応になっていない治療が含まれています。さらに詳しく知りたいという方は厚生労働省の先進医療の概要についてをご覧ください。

この例のように多くの場合には、ひとつの病気に対して複数の治療法が存在します。しかし、その個人に対する効果は事前にはわかっていないことがほとんどなのです。

AとBという2種類の治療があるとします。Aの方が効く人が多いことはわかっていますが、Bの方が効く人もいるようです。しかし、実際に使ってみるまではどちらが効くかわからないというのが、現実には一番多い状況です。

この状況なら、まずはAの薬を試すのが確率的にはよさそうですよね。
でも、効いてくれるかどうかは神様だけしか知りません。

治療効果が確実な薬はない


 

 

医療は不確実なままなのか?

ここまでの話を一度まとめてみます。

理由①診断が不確実?!
 検査はそもそも100%病気を見つけられるようにできていない
 
理由②⼿術が不確実?!
 人間の体は無限ではなく、衰えるもの
 
理由③治療の効果が不確実?!
 治療効果が確実な薬はない

近年では個別の医療などの研究も進んできているのは確かであり、期待される領域です。
しかし、これら3つの要素が医療から完全になくなることは、きっとないと思います。
こういった不確実性があることを理解した上で、医療者とそして、あなた自らが進んで医療に関わることが大切なのだと思います。

 

 

参考

1.有効性評価に基づく肺がん検診ガイドライン

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