生存時間分析入門③KM曲線

KM曲線

  今回はKM曲線の実際の書き方を説明したいと思います。
前回の「生存時間分析入門②」で説明した「打ち切り」を理解しておく必要があります。なんだっけという方は、復讐してみてください。
まず、用語の説明をします。
  1. No at risk:アウトカムを起こす可能性のある人数(死亡をアウトカムにする場合は死んだというイベントが観察されうる人数)
  2. Outcome:アウトカムを起こした人数(期間内に死亡した人数)
  3. Censored:打ち切り(期間内にNo at riskからはずれた人、観察の対象外になった人数)

  さて、今回は実際にKM曲線を描いてみます。
それでは下の表をみてください。
 
 
期間は月としましょう。
0ヶ月のところではNo at riskは10人になっているので、観察開始時には10人いた事になります。
もちろん観察時点では全員生きているので、生存率は100%(1.0)ですので、グラフには1.0のところに印をつけます。
 
では次に行きます。
期間が1ヶ月のところではOutcomeが1でCensoredが0です。
0ヶ月から1ヶ月の間に1人が死亡したことを意味します。
No at riskが10人いたところで、1人がなくなったので、その段階での生存率は
1.0 X (10-1)/10 = 0.9
となります。というわけで、1ヶ月のところで0.9に印をつけます。
 
次に、この2点をつなぎますが、まっすぐに直線で結んではいけません。
0-1ヶ月の期間は10人全員行きていたとして、1ヶ月になった瞬間に1人死んだと考えます。そうすると、
 
このように、カクッと下がります。ここまではいいでしょうか。
 
次に、2ヶ月のところでは、死亡した人はいませんが、打ち切りになった方が1人います。
この方は、死亡するかもどうかもわからなくなるので、No at riskから除外されてしまいます。
死亡はしていないので、生存率には影響を与えませんので、グラフはのまま1ヶ月と同じ0.9をプロットして、線でつなぎます。
 
では、次に向かいます。ここが少しややこしいかもしれません。
3ヶ月では1人が死亡していますので、生存率は変わります。計算方法ですが、No at riskはこの期間は8人なっていて、そのうちの1人が死亡しています。ですので、生存率は
 1.0 X 9/10 X (8-1)/8 = 0.79となります。
ですので、3ヶ月では0.79をプロットして、つなぎ方は、先程と同じく、3ヶ月になったところでカクッと下がるのでしたね。
 
肝心なところが一通り終わりましたので、余裕のある方はこの表を見ながら、続きを計算して描いてみてください。
 
続けます。
4ヶ月ではOutcomeがないので、スルーします。グラフも直線のままです。
 
5ヶ月では1人死亡して、1人打ち切りがいます。No at riskは5人になっているので、同様に生存率を計算すると
1.0 X 9/10 X (8-1)/8 X (5-1)/5 = 0.63
となります。
 
6ヶ月では1人が死亡していますので、
1.0 X 9/10 X (8-1)/8 X (5-1)/5 X (4-1)/4= 0.47
となります。7ヶ月は打ち切りが一人いるだけなので、生存率は変化しませんね。
 
そろそろ終盤になってきました。もう自分でも計算できるのではないでしょうか?
 
8ヶ月では1人死亡してますので、生存率は
1.0 X 9/10 X (8-1)/8 X (5-1)/5 X (4-1)/4 X(2-1)/2=0.24
となります。 お気づきでしょうか?打ち切りが多くなってくると、1人の死亡だけで生存率がガクッと下がりますね。
 
最後は全員死亡して、No at riskがいなくなりますので、生存率は
1.0 X 9/10 X (8-1)/8 X (5-1)/5 X (4-1)/4 X(2-1)/2 X (1-1)/1 = 0
です。
 
お疲れ様でした!

No. at Risk

KM曲線(カプランマイヤー曲線)を自分で書いていると気づくこととして、打ち切りが多いと後半では1人の生存率への寄与が大きくなってきます。
始まりの人数は多くても、大半が打ち切りになっているような研究は、結果の解釈に注意が必要です。
No at riskの表がちゃんと載っているのか、確認して論文を読むようにしましょう。

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