腹部疾患の診断と治療②

腹部症状の問診だけではなく、問診で聞くべきこととして、以下のような語呂合わせがあります。

OPDCSFA

O: Onset (いつ?どんな発症様式?)
P: Progression(増悪しているか?)
D: Duration(続いている時間は?)
C: Constant, Intermittent(持続か間欠か?)
S: Setting(どのような状況で?)
F: Frequency(どれくらいの頻度で?)
A: Aggravating, Alleviating(増悪・緩解させる要因は?)
A: Associated(関連していそうな症状は?)

LIQR(痛みの場合は特に)

L: Location(部位は?)
I: Intensity(どれくらいの強さ?)
Q: Quality(どんな性状の?)
R:Radiation(放散痛は?)

その中でも症状の”始まり”(Onset)とその後の”続き方”(Constant, Intermittent)は、
鑑別疾患を考える上で、
とても重要です。

発症様式

まずは、発症様式についてまとめてみましょう。

  • 突然発症(Sudden)
    あの時、あの瞬間!までわかる。
    ex)テレビを見ていたとすれば最後のシーンまで覚えている。
  • 急性発症(Acute)
    症状の開始から、最高点に至るまでが〜30分程度であったもの
    ex)なんか痛いかもと思っていたら、間も無く痛みが強くなってきた。
  • 緩徐発症(Gradual)
    いつ始まったかと聞かれても大まかにしか答えられない。数時間かけて最高点に至るもの
    ex)正直いつ始まったかも曖昧でよくわからないといったこともある。

突然発症

発症様式で特に大切なのは、突然発症の場合です。

病歴から突然発症だと思われる場合には「破れる(裂ける)、つまる、捻れる」の疾患だと覚えてください。具体的には以下の疾患を念頭に診察に臨みましょう。

破れる系:大動脈解離、腹部大動脈瘤破裂、子宮外妊娠破裂、上部消化管穿孔、卵巣出血

つまる系:腸間膜動脈閉塞、尿管結石、胆石発作

捻転系:卵巣捻転、結腸捻転

特に”破れる系”の疾患は、死に至ることもあります。バイタルサインを確認しながら、迅速に検索を行いましょう。何をするかについては、別の機会にします。

 

急性発症

急性発症にも多くの腹部疾患が含まれます。
腸閉塞は急性発症で発症する疾患の代表格といえます。話はズレますが、腸閉塞とイレウスは別ものだと考えてください。これはまた別の機会に話します。

話を戻します。
他に炎症を伴う疾患の多くは急性発症の様式をとることが多いと考えましょう。
ただし、炎症性疾患の場合には緩徐発症でおこる場合もあるので、突然発症の場合ほどは疾患が絞れません。

腸閉塞、急性虫垂炎、大腸憩室炎、下部消化管穿孔

 

緩徐発症

緩徐発症の場合には慢性疾患も念頭に診察する必要があるため、発症様式以外の問診(体重変化や便の性状の変化など)が重要になってきます。
急性発症に含まれる鑑別疾患も、この緩徐発症で起こることもあるので、念頭において問診をしましょう。

大腸癌による閉塞、炎症性腸疾患

間欠痛と持続痛

腹痛の問診で大事なことの2つ目は、その後の痛みの経過です。
大きく分けて間欠痛と持続痛に分けられますが、実は多くの方は勘違いしています。
まず、間欠痛を図に表してみます。


間欠痛といえば、このような痛みだと
ほとんどの方は納得されると思います。

 

 

 

大事なのはこの次です。
Aを見て持続痛だと納得される方は多いと思いますが、Bを見たときに、これは間欠痛だなと思う方大出のはないでしょうか?
間違いではありませんが、ここで持続痛だと決めるために重要なことは

”痛みがなくなるのかどうか”

ということです。

 

痛みが完全になくならない場合、炎症性の疾患や虚血性の疾患の存在を強く疑う必要があります。
自然に痛みがなくなったのであれば、まだいいですが鎮痛剤で痛みがよくなったなどという理由で返してしまうと数時間後に増悪して患者が帰ってくるなんでことになりかねません。

痛みがなくならない患者をみたときは、何かあると思って診察することが大切です。

 

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