救急外来でイレウスは稀?!

初期研修がはじまると、救急外来で勤務することもあると思います。

腹痛は研修医がもっとも診たくない主訴のひとつですよね。その中でも代表格とも言えるのが「イレウス」。腸が張っている人にはみんなイレウスという「あだ名」がつけられてしまいます。

じゃあ、イレウスって何ですか?と尋ねると「腸閉塞です」と答えられてしまいます。イレウスと腸閉塞は同じなのでしょうか?答えはノーです。国家試験でよく見る分類では腸閉塞をイレウスをいう言葉を使って説明していますが、臨床で用いる分類としてはあまり使い勝手がよくありません。

極論すれば、腸管拡張・排ガス停止・排便停止を見たときの分類はこれだけです。

ここ!という閉塞部位が指摘できれば、腸閉塞です。

腸を画像で追っていくと、、、あれ?片方は胃につながった、、、もう片方は、、、あれ?大腸につながってしまった。という時にはイレウスを疑います。

腸閉塞の代表的な原因は術後の癒着です。手術歴の有無の確認は必須事項と言えます。それ以外には癌の腹膜播種などが考えられます。

イレウスの原因でもっとも有名なのは「術後イレウス」です。腹部手術後のおよそ7日以内に腸蠕動が低下して、小腸が張ってしまう状態を言います。では救急外来では?実際にはあまりありません。

腸炎でも腸管は拡張しますが、排便や排ガスはありますので、イレウスでも腸閉塞でもありません。あえていうなら急性膵炎の重症例で炎症が広がることによってイレウスを起こした例に遭遇するかもしれませんが、頻度は低いといえるでしょう。

そう、つまり救急外来でイレウスに遭遇することは稀なのです。とはいうものの非常に普及してしまった単語であるがゆえに、多くの医師が使用している現状があります。

そこで、イレウスの診断がついている患者を見た時には必ず、

「本当のイレウス」なのか「腸閉塞」なのかを考えるくせをつけましょう。

イレウスと腸閉塞は原因も違えば、治療も違います。

病歴がよくわからない時でもやるべきことは、画像上での「閉塞機転」を探すことです!
あなたがイレウスと診断した患者は「イレウス」ですか?「腸閉塞ですか?」