臨床家が論文を読む前に読むべき本

論文を読む際に必要な知識は、医学部時代には授業では教えてくれませんでしたし、残念ながら私は自分でも学ぼうとすることはありませんでした。

実際に働きだすと、論文を読む機会は山ほどあります。

「抄読会やるから論文選んで要約してきて」

「来週のレクチャーあるから、この論文読んできてね」

など、準備をする時間もないままに読んで説明することが求められます。

私も大学院に行くまでは自分なりに書籍で統計手法の基本などは勉強していましたが、正直いってIntroduction → Results → Conclusion → (Method)くらいでしか読んでいませんでした。Methodなんか読んでもよくわからないからです。きっと多くの臨床家のみなさんが同じなんじゃないか?と思っていました。

2018年に大学院に行くことで統計を一から学ぶ機会があり、論文の読み方が変わってきました。課題として、大学院にいかない医師でも論文を正しく読む方法を考えることが必要でした。そのために、臨床家向けに書かれた本を何冊か読み、その中でこれを読んでおいた方がいいと思った書籍をまとめてみました。

①初心者

 今日から使える医療統計

 ほとんど統計の勉強がしたことがない人でもわかるように書かれています。

そこまで突っ込んだ話は出てきませんし、分量も多くありません。私も大学院に行く前に読んで非常にわかりやすいなと感じた1冊でした。まずは苦手意識をとるためにも導入として読むべき1冊だと思います。

あなたの臨床研究応援します

こちらも前述の新谷先生の書籍となりますが、こちらは研究をしたり論文を書いたりする方を意識して書かれている印象があります。歴史的にはエビデンスレベルが低いと考えられてきた観察研究ですが、近年その価値が認識されるようになっており、主に観察研究とする時・読む時に注意することがわかります。以下でも紹介しています。

【読書感想】あなたの臨床研究応援します

②中級者

超絶解説 医学論文の難解な統計手法が手に取るようにわかる本

こちらの書籍は観察研究でよく使用されるいわゆる臨床家が”読み飛ばしたくなるMethod”に書かれているようなことを、わかりやすく説明してくれています。実際に使用されている統計手法の中身や原理までを理解するには物足りないと感じるかもしれませんが、少なくとも論文を読むことがメインの臨床家にとってはこれだけ知っておくと論文の読み方がずいぶん変わると思います。

③番外編:システマティックレビュー・メタアナライシス

そのエビデンス、妥当ですか? システマティック・レビューとメタ解析で読み解く 小児のかぜの薬のエビデンス

こちらはまだ新しい本で内容は小児科の風邪に使用される薬剤のエビデンスについての記載です。メタ解析の方法や読む際に注意する点などがチャプター間のコラムでまとめられており、私のそってはそちらが非常に勉強になりました。私自身が最近メタ解析についても勉強を始めたというのもあるかもしれませんが、小児科以外の方にもわかりやすくまとめられていると思います。


他にもいろいろな臨床家向けの統計本は読みましたが、実際にはなんとなく難しそうなことをさらっと説明して、すぐに忘れてしまうような内容の本が多かったように思います。この3冊はその中でもわかりやすく、論文の吟味をする際にも役立つ情報が得られたなと思ったものです。

勉強の参考にしていただければと思います。