胆石性膵炎後の胆嚢摘出術はいつすればいいのか?

今回はBritish Journal of Surgeryからのメタアナリシスを取り上げます。

参考文献
Meta‐analysis of randomized clinical trials of early versus delayed cholecystectomy for mild gallstone pancreatitis.

Published: 3rd July 2019

Authors: N. Moody, A. Adiamah, F. Yanni, D. Gomez

「胆石性膵炎後の胆嚢摘出術はいつすればいいのか?」というCQに対して、RCTのみを用いた メタアナライシスを行なっています。Open accessの論文ではないので、方法や結果についてはAbstractのみを用いています。

背景

急性膵炎

急性膵炎の原因としては、胆石が30-50%。膵炎の治療は基本的に補液など手術以外の方法がメインであるが、胆石性膵炎に対する根治治療には胆嚢摘出術必要となる。

胆嚢摘出術の推奨時期は?

軽症膵炎後の胆嚢摘出は各種ガイドライン(BGSなど)でも膵炎と同一入院中もしくは退院した場合にも2週間以内の胆嚢摘出術が推奨されているが、エビデンスレベルは低い。

実際には西欧でも2週間以内に行われている患者は半数にも満たない。早期に手術を行うことで炎症の影響が手術合併症に影響するからかもしれない。

過去のメタアナライスは観察研究に基づくものであり、交絡が除去できていない可能性があるため、本研究ではRCTのみを用いたメタアナライシスを行っている。

方法

論文の検索方法は?

Embase, MEDLINE, Cochrane databaseから早期胆嚢摘出術(EC)と晩期胆嚢摘出術(DC)を比較したRCTを検索。

EC:同一入院中に胆嚢摘出術
DC:退院後に2週間以上のインターバルを置いて胆嚢摘出術

解析方法は?

同定された論文からのプール解析(全患者のデータを集めて解析しなおす。結果のみを統合するわけではない)。

ランダム効果を用いたメタアナライシス(患者のクラスタリングを考慮した方法)。

Primary outcome:胆道関連イベントでの入院

Secondary outcome:術中および術後合併症の発生

RevMan5を用いて解析(メタアナライシスに用いるフリーソフト)

結果

5つのRCTから629人の患者を同定(318人がEC, 311人がDC)

胆道関連イベントでの入院はEC群で少なかった(OR 0.17; 95% CI 0.09–0.33 )

術中合併症(OR 0·58, 0·17 to 1·92) や術後合併症(OR 0·78, 0·38 to 1·62)に2群で差はなかった。

結論

軽症の胆石性膵炎後の胆嚢摘出術は早期に行っても合併症は増えず、胆道関連合併症を減らす。


実感としても軽症の膵炎であれば、入院後数日で食事も可能になっていることも多いので、入院中に手術してしまった方がいいように思います。むしろ、早期手術といった時に一番問題になるのは、手術枠がそんなすぐに取れないということかもしれません。