公衆衛生学修士(MPH)は国内でも徐々にその知名度があがりつつあります。MPHと聞くと「統計のこと詳しい」「研究が立案できる」「論文が書ける」などのイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。実際のところどうなのか少し解説します。
①統計について
統計はSPHの授業にもあるので、その基礎はある程度学ぶことができます。例えば、P値がどのように計算されるか、t検定がどのように行われるのか、その程度のことは統計の基礎の授業で学びます。しかし、それくらいなら独学でも学んでるよ!という方もいるかと思います。
少し進んだ手法になると、授業以外のところで勉強会に参加したりしなければなりません。
ですので、MPHの学位を持っている人でも統計に関する知識はかなり幅あります。もしその方が論文を書いていれば、その論文に使用されている手法には詳しいかもしれません。
②研究立案について
東大SPHの場合は研究を立案する授業がありますので、疑問を研究につなげるかの思考プロセスを学ぶことはできます。しかし、実際に研究を遂行する上で現実に問題になってくることは多く、独力で立案から遂行するまでは難しいと思います。現状では私も立案はできても、全過程を独力で成し遂げることは不可能だと思います。
③論文について
答えはノーです。
論文の書き方の授業はありました。しかし、論文は研究立案から統計解析とその最終工程にあたる部分です。在学中に実際に論文化していない限りは、論文が書けるようになるとは言えません。東大SPHの場合には課題研究で論文化が必要ですが、日本語でもよいとされているため、全員が英語でかいているわけではありません。
MPHといっても、私を含めて公衆衛生学の入口に踏み込んだだけの知識しか持たないことも多くありません。授業以外の研究でどのようなことをしているのかによって、できることと、得意な分野は大きくことなりますので、身近にMPHの学位をお持ちの方がおられましたら、大学院でどのようなことを学んでいたのか聞いてみるといいかもしれません。
ちなみに私はデータベース研究に取り組んでいたため、後ろ向き研究の手法はいくらか使用した経験はありますが、前向きにデータベースを作成したり、データ管理をした経験はありません。またランダム化比較試験もしたこともありませんので、どれくらいのお金がかかるのかなどの計算もできないといった状態です。
論文に関しては数本執筆することができたため、ある程度の「かたち」にする力はついたと思います。
これからMPH取得を考えるみなさんには自分がどのような力を身に付けたいのかをはっきりさせてから、入学することを強くオススメします!