国内の外科と言えば癌治療がメインになっており、急性期外科に関する良書がないのが現状だと思う。その中で、「ブラッシュアップ急性期外科」の出版。急性期外科に関わるすべての外科医ならびに救急外来医師は読んでおいて絶対に損はない1冊と言える。
急性虫垂炎から胆嚢炎、急性膵炎、上下部消化管穿孔、急性腸管虚血や食道穿孔にいたるまで、外科医が遭遇しえる急性期外科疾患を網羅している。
これはハウツー本ではない。急性期外科疾患の治療の歴史に触れながらも最新の文献を紹介している。ここまでで終われば、類書はあるだろうが、本書では文献の紹介に止まらない。国際学会をとおして得たグローバルな意見や自身経験も踏まえた上で、筆者自身の考え方・マネジメント法が紹介されている。献上で推奨されている内容は日常のプラクティスではどうすべきなのか?に答えてくれる。
文献検索と自身の意見を述べるだけならば、若手外科医にもできそうなものではある。本書が秀逸な点は標準マネジメントが定まっていないような疾患については、筆者の豊富な経験を元にマネジメント法を記載しているところである。複雑な上部消化管穿孔(巨大穿孔、狭窄、低栄養)のマネジメントの紹介では、文献紹介を交えつつも筆者が推奨する方法を記載している。あくまで”紹介する”に留めており、文献レベルでの推奨と個人の推奨が分けて書かれている。
この急性期外科本の最大の特徴は筆者が救急医ではなく、”外科医”として急性期外科について書いている点だろう。読んで絶対に損はしない。
本書は外科医向けではあるが、医師全般にむけに書かれた「ブラッシュアップ急性腹症」はむしろ内科医のおすすめしたい。