論文の査読依頼のメールが届いたら?

「論文を読む」、「論文を書く」、そして論文を書いたことのある方ならば査読(peer review)という過程が存在することも知っていると思います。

同じ領域の専門家による論文の内容の吟味が行われるのです。数本の論文を書いたり、他人によって査読者(Reviewer)として推薦されていたりすると、メールで査読の依頼が来ます。

論文の読み方や書き方についての解説本は多いと思いますが、査読の作法について記載した本はあまり見かけません。

今回は、Natureが無料で公開している査読の作法を解説したオンラインコースを受けたので、何回かに分けて内容をまとめてみたいと思います。

参考 Focus on Peer Review online course — free coursemasterclasses.nature.com

査読のプロセス

手順1
論文投稿
論文が雑誌の編集者(Editor)に投稿される
手順2
編集者による決定(Editorial decision)
まず最初に編集者によって選抜され、通過した場合は査読者の選択にすすむ。
手順3
査読者(Reviewer)の選択
リストの中の査読に者Emailで査読の可否について確認する。
手順4
査読
依頼した査読者が承諾すれば、論文の査読が始まる。
手順5
レポート提出
査読者はその内容をレポートとして編集者に送る。
手順6
編集者による決定(Editorial decision)
査読者からのレポートを読み、Accept or Revision or Rejectを決定する
手順7
著者へのフィードバック
査読者からのレポートを添えて、Accept or Revision or Rejectを通知するRevisionの場合は論文の筆者は査読者からのコメントに対する解答や論文の修正を行ってから再度投稿し、”手順4”から繰り返される。
手順8
最終決定(Final decision)
Revisionの末、追加の修正事項がなければAcceptとなる。Revisionの後でRejectをなることもある

査読は何のためにするのか?

基本的に論文の査読はすべてボランティアです。お金にならないということから全く引き受けないという方もいます。何のために査読を引き受けるのでしょうか?

  • 専門領域のアップデートができる
  • 他人の論文に触れることで、自分の執筆能力が向上する
  • 専門領域の医学の発展に寄与できる

などが挙げられます。Natureのオンラインコース内では他にも「雑誌のEditorと関係を作れる」「自分のCVを高める材料になる」などもありました。

業績というよりは人の論文の評価をすることは、自分で書いている以上に勉強になることが多いと思います。

査読依頼を受ける前に考えるべきこと

査読できる分野の論文か?

知識が全くない分野の査読はさすがにできないと思います。
そのような論文の査読を引き受けて、質の低い査読をしてしまうと

  1. 自分のその雑誌内での評価が下がる
  2. 編集者が無駄な時間を費やしてしまう
  3. 質の低い論文が出版されることになる

などが起こります。しかし、知り合いのある雑誌の編集者に話を聞くと、査読者を探すのはかなり大変な作業だそうです。Leading Journalともなれば、査読者はすぐに見つかるのかもしれませんが、それ以外の雑誌では査読者を見つけるのも簡単ではないようです。自身の専門分野と完全に一致しない分野の論文でも引き受けてた方がよいのではないかと思っています。

査読する時間はあるか?

査読依頼を受ける多くの方は、自身の仕事があります。そのため、時間外で査読することなります。査読にはその領域の論文を読む時間も必要になるため、締め切りまでに間に合いそうかを検討する必要があります。

COIはないか?

Conflict of interests:利益相反がないかを確認します。論文の評価に影響を与えてしまうような関係にある人が著者に含まれている場合は編集者にその旨を伝えます。

  • 著者と同僚、元同僚、共著者の経歴、共同での研究費の申請など
  • 自身の行っている研究内容と対立する、もしくは競っている

 

査読依頼を増やすには?

ORCIDやPublonsをいったサイトで自身の業績をまとめておくことで、査読依頼が増えるかもしれません。

私自身もORCIDとPublonsには登録しています。

Publons


最後に

査読はすればした分だけ自分の知識や技術となると思います。
私自身もまだまだメジャーな雑誌からの査読依頼は数えるほどしかありませんが、明らかな専門外分野の論文以外は依頼を受けるようにしています。

査読依頼のメールは来るけど、承諾したことがないという方もまずは症例報告の査読依頼からでも受けてみてはいかがでしょうか。