【ナース向け】急性虫垂炎は手術?抗生剤でちらす?

外科病棟にいると虫垂炎の患者を見ることは珍しくないと思います。
 
病院によっても虫垂炎の治療は異なってくる部分もありますが、標準的な治療とは一体どういうものでしょうか。手術?抗生剤?
 
実はどちらも正解です。虫垂炎で手術するかしないかは
①腹痛が出現からの時間 
②汎発性腹膜炎(腹部全体の腹膜炎)があるかないか
で決まります。

①腹痛が出現からの時間

虫垂炎の腹痛は「なんとなく”みぞおち”が変な感じ」から始まることが多いので、厳密に「何時から」とは言えない患者も多くありませんが、だいたい「〇日の午前から」のように答えてくれます。
発症から来院までの時間が、
”〜4日程度” or ”5日程度〜” 
のいずれかが、治療方針を決める1つ目のポイントです。敢えて”程度”としたのは、厳密な決まりはなく2日程度で分類しているものもあるからです。個人的には「発症から4日は迷うところ」「5日経っていたら確実に」というくらいの分け方です。
 

②汎発性腹膜炎(腹部全体の腹膜炎)があるかないか

虫垂炎は発症から数日経つと穿孔(穴が空いて破れる)してしまいます。穴が空いたら、緊急手術なのでは?!と思う方もいるかもしれませんが、実は手術するかどうかの判断にはあまり重要ではありません。
穿孔して腹腔(お腹の空間)全体に内容物が広がれば、汎発性腹膜炎の状態になります。これは緊急手術が必要になります。
 
一方で、穿孔しても周囲の組織(脂肪や腸管)に被われてしまえば虫垂の内容物は”虫垂周囲”だけに留まってくれます。こうなってしまえば、汎発性腹膜炎にはならず、緊急手術も回避できます。(ややこしいのでここでは割愛しますが、膿瘍やフレグモンといった状態になります)

これら①、②をまとめると以下のようになります。

近年では発症4日以内の患者に対しても、抗生剤で治療する病院もあります。

発症早期の患者への抗生剤治療は積極的には推奨されていないのが現状ですが、手術室の空き状況や患者の希望などによって抗生剤治療が行われるケースもあるかもしれません。

ちなみに「抗生剤でちらす」「アッペをちらす」は俗語なので、医療者には使用しないことをオススメします。