【ナース向け】直腸癌術後の看護ポイントは?

以外と知らない方も多いのですが、直腸癌と結腸癌を合わせて大腸癌と言います。大腸癌と一括りに言いますが、結腸癌と直腸癌では術後に注意すべき合併症が違ってきます。今回は直腸癌術後について説明します。

直腸と結腸って?

そもそも直腸と結腸ってどこで分けるのでしょうか。ナースがどちらに対しての手術なのかを知るもっとも簡便な方法は医師の病名記載を見ることですね。

実際には直腸と結腸を区別する決まりはありますが、おもしろくないので割愛します。病名に直腸癌 or 〇〇結腸癌(S状、下行、横行、上行、盲腸)のいずれが記載されているのか確認しましょう。

術後看護で注意すべき点は?

最悪の合併症、吻合不全!

直腸癌の手術をする外科医なら経験したことがないという人はいないと思います。吻合不全とは「管と管つないだ部分がうまくつながらないこと」を言います。

どれくらいの人で起こるのか?

国内のデータでは9.5〜11.4%の患者で起こると報告されています。再手術が必要な患者は6.4〜7.1%とされています[1]
もちろんすべての患者で同じ確率で起こるわけではなく、吻合不全の起こりやすい患者はいわゆる”状態のよくない患者”です。

術後何日目に起こるのか?

一般的には術後2週間以内に診断されます。そんなに経ってから起こるの?と疑問を持たれる方もいると思います。実際にいつ起こったのかを見極めるのは難しいので、診断されるまでの時間と考えてください。
吻合不全は起こる時期によって早期(術後6日以内)晩期(術後7日目以降)に分類されます。早期と晩期では起こる原因が異なると言われています[2]

  • 早期のものは手術の内容に原因がある可能性が高い
  • 晩期のものは患者の状態(栄養・持病など)に問題がある可能性が高い

ナースとしては手術時間がいつもと比較しても非常に長いなと感じた場合や、患者の健康状態に不安のある患者では、注意しておくといいと思います。

MEMO
吻合不全の症状としては発熱・腹痛の増悪に注意しましょう。

吻合不全以外の機能障害について見ていきましょう。評価が難しい合併症でもありますが、2019年のフランスからの研究を参考に見てみます[3]

排便障害

様々な症状に対して排便障害という言葉が使用されますが、ここでは

  • ガスや液状便の失禁
  • 頻回の排便
  • 一度に便が出切らない
  • 切迫感

が挙げられています。実に患者の65%が術後に排便障害を起こしています。重症な患者は40%程度で、術前の化学放射線療法を受けている患者では重症になりやすかったようです。

一方でこれらの症状は必ずしも一生継続するわけではありません。

MEMO
術後は排便機能について確認することも大切です。便失禁が多い患者では退院後も下着などで対策を要することがあるため、アドバイスをしましょう。

排尿障害

男性の場合

中等症以上の症状のある患者は25%、重症は全体の2%程度でした(IPSSスコア

MEMO
特に男性の場合は尿道カテーテルを抜去した後に自尿があるか、確認することが必要です。
女性の場合

Urinary Symptom Profile (USP)というスコアをつけて報告されていますが、解釈が少し難しいため、ここでは割愛します。

性機能障害

男性の場合

勃起障害は軽症も含めると90%以上の患者で起こっています。重症なものは60%程度の患者で起こっています。

女性の場合

80%程度の患者で性機能低下を起こしていました。


ただし、術前の状態がわからないので、手術によって生じたものかどうかわからない点は注意が必要です。

術後に起こりやすいことや、起こった場合に対処が必要な合併症については予め知っておくと看護に自身が持てると思います。